TOSS北海道 / サークル参加へのドラマ
■自分は日本一力のない教師だ、と思った。
小中併置の小規模校で生徒5名の学級の担任になった。
この学級を私は荒らしてしまったのである。
たった5名の学級すらまとめることができない。
そう思うと、悔しくて涙が出た。
■「やんちゃ」な5人であった。
毎日、何かしらの問題が起こった。
怒鳴り散らして怒る。個別に呼び出しては怒る。怒る、怒るの毎日で、私は教室で笑えなくなっていた。
彼らにもいいところもあったはずである。
しかし、私にはそれが見えていなかった。
彼らの声に耳を傾けられない教師になっていた。
5人は私に反発した。
「お前なんか教師辞めちまえ。」
そう言って私の前から走り去られたこともあった。
生徒の前に立つ自信を失った。
教師を辞めることばかり考えていた。
■S先生と出会ったのはそんな状態にあったときだった。
「どうやって学校を休もうか。1年目は、毎朝、そればかり考えていた」
S先生が自分の体験を話してくれた。
「サークルに入っていなかったら、たぶん教師を続けていなかった」
今のS先生からは信じられない話だった。
私も学級を何とかしたいと思った。
サークル参加はまさに藁をもつかむ心境だった。
■サークルに参加した。
レポートの量と検討のスピードに圧倒された。
ついていくのに精一杯で、何をやっていたのか、ほとんど覚えていない。
しかし、1つだけ忘れられない言葉がある。
「教師が本気になって子どもと一緒に遊ぶ」
サークルの中で聞いた言葉である。
私は子どもと本気になって遊べない教師だった。
どちらかと言うと遊んでいる子ども達を職員室から眺めている教師だった。
勤務校の周辺には豊かな自然があった。
その中で育った生徒たちは裏文化の申し子のような子ども達だった。
雪の積もったある日、私は生徒に言った。
「雪合戦をしよう。」
生徒に受け入れられるか不安だった。
「いいね!やろう!」
「先生、うちらの雪合戦、ハードだよ。」
学級が沸き立った。
予想外の反応だった。
「先生は雪のふらないところで育ったでしょ。だから、冬の遊びをよく知らないんだ。今日は先生に冬の遊びを思い切り教えてください。」
私は生徒に背中を押されながら外に出た。
雪合戦は確かにハードだった。
チームに分かれていたはずだったのに同じチームの生徒が私に雪をぶつけてきた。
「やったな、このヤロー!」と私は雪玉を投げ返した。
そこから、生徒5人対私の雪合戦が始まった。
「先生埋めろー!」
「やめろー!」
全員、雪まみれでずぶ濡れになった。
久しぶりに、いや、初めてだろうか、生徒と一緒に心から笑った気がした。
学級の重たい雰囲気が一気に吹き飛んだ。
■サークルで聞いた言葉。
「教師が本気になって子どもと一緒に遊ぶ」
これが無ければ生徒と一緒に大笑いをすることなど無かっただろう。
あの日を境に生徒との溝が少し埋まったような気がした。
時が経って卒業式直前。
学級で何か思いっきり遊ぼうという話が上った。
真っ先に出されたのが雪合戦だった。
生徒もまた、よい思いでとして覚えていてくれたようである。
■サークルで実に多くのことを学んでいる。
正直に言って、学んだことすべてを消化し、自分のものにできているとは言えない。
己の未熟さ故に、である。
しかし、腹の底から実感していることが一つある。
教師が変われば、生徒も変わる。
学び続ける教師だけが、髪の毛一筋のドラマを教室に生み出すことができる。
そのことを教えてくれたのが、サークルであり、教室の生徒たちであった。