TOSS北海道 / サークル参加へのドラマ



最後の砦

 

■初任地は僻地の小さな中学校だった。
 全校生徒といっても15人にも満たないほどである。
 どの生徒にも目が行き届いた。
 だから、授業について何も知らない私でも、自分自身が生徒として受けた授業のことを思い出しながら、それなりに授業をすることができていた。
 そんな頃、同じ職場の先生に「いっしょにサークルで勉強しませんか?」と誘われた。
 特に断る理由もない私は先生の車に乗り込んだ。
 サークル会場には部屋一面のレポートが敷き詰められていた。
 手にしたレポートの量にまず驚かされた。
 1センチ以上はあろうかという厚さである。
 どのレポートも私には新鮮で目が釘付けになった。
 代表の先生が目にも止まらない早業で、次から次にレポートを斬っていく。
 その姿はまさに圧巻だった。
 これが「TOSSサークル」との出会いであった。

■それから5年の月日が流れた。
 今、私は全校生徒150名ほどの中学校に勤務している。
 勤務した当初は授業がまったく上手くいかなかった。
 授業中にも関わらず、おしゃべりをしたり、何も答えようとせずノートに落書きばかり書いている生徒がたくさんいた。
 教室の雰囲気も悪く、生徒の意欲もなくなっていた。
 私は悩み、疲れてしまった。
 そんな私に残っていたのが「サークル」であった。
 まさに最後の砦であった。
 私はあらためて自分の授業を見直した。
 ビデオに録画した自分の授業はとてもひどく、お世辞にも授業と言えるものではなかった。
 それ以来、私の授業に対する意識が変わった。
 「どのように指示や発問をすればよいのか?」
 「力のある教材はないか?」
 「授業のリズム、テンポはこれでいいのか?」
 そんなことばかり考えるようになった。
 この時から私の「教師修業」が始まったのである。